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 空想の森の草木染め<2019夏>



             
       空想の森の草木染めと「自然布」の織り

[由布院空想の森美術館]<大分>と[森の空想ミュージアム/九州民俗仮面美術館]、[友愛の森/里山再生プロジェクト]<宮崎>を行き来し、九州脊梁山地の山々を熟知する高見乾司とその仲間たちが、山野に自生する草木を採取し、染めるプロジェクト&ワークショップです。
◇「自然布」とは山野に自生する植物から得られた糸で織られた布。縄文の昔から日本人の「衣の文化」として受け継がれてきた技術が失われようとしています。これを復元・伝承することも目的のひとつ。





【二十八柱を祀る神社へ参拝!&神楽衣装の麻糸つむぎ体験】
主催: 諸塚村観光協会
とき 2019年6月16日日曜日 10:00〜17:00
ところ しいたけの館
〒883-1301 宮崎県 東臼杵郡諸塚村大字家代3068
全国でも類を見ない、数多くの御祭神を祀る諸塚神社と立岩大明神をご案内!
その後は、古くから手仕事として行われていた、麻をより繋いで糸にしていく麻糸つむぎを体験します。つむいだ麻糸は、神楽の衣装に使用され、諸塚神社へ奉納されます。
幻の神楽とも言われる大神楽は、2020年2月に開催予定!お楽しみに!





【クララ<幻草>を移植・採取し、黄色を染めるワークショップ】
クララは高原の草原地帯に自生する植物。その根はくらくらとめまいがするほど苦いことからその名がついたと言われます。鮮明な黄色の染まる優秀な染料植物です。自生地は少ないのですが、由布院空想の森美術館の立つ敷地になんと、10株ほども自生。そこはいずれ埋め立てられる場所にあるため、移植します。その際に採取される葉と茎で染めます。
<第一回>7月20日と21日 午前10時〜午後3時
・場所 由布院空想の森美術館 大分県由布市湯布院町川北平原1358
<第二回>8月3日と4日
・場所 森の空想ミュージアム 宮崎県西都市穂北5248-13
*由布院で採集したものを持ち帰り、染めます。
参加費 1日の参加・お1人5000円(シルクストール1枚分と昼食代を含みます)
☆お問い合わせ、お申し込みは 0977-85-7542(由布院空想の森美術館)
または(担当・高見乾司090-5319-4167)へ。



山茶の若葉で紫が染まった/「神がかり」へと誘う色



この春、椎葉山と諸塚山が境を接する辺りで山茶の若葉を摘み、鉄媒染で絹布を染めたところ、古名に「古代紫」という、渋い紫に染まったので、「山茶」について記しておこう。
以前、椎葉の焼畑を見に行った時、一面の蕎麦の花の中に茶の木が混じっているのに気づき、焼畑の主に
――焼畑では、蕎麦と一緒に茶の種も蒔くのですか。
と問うと、
――焼畑で茶の種など蒔くものか。山茶は山焼きが終わった土地には必ず生えてくるものよ。
という答えが返ってきて、わが意を得たりという感想を持ったものだった。
山仕事をする人たちや、狩人などが、弁当を囲むとき、ちょっと道の脇や山の斜面、雑木林の中などに行き、「山茶」の枝を折り取ってきて、焚き火で軽く炙り、薬缶に入れて沸騰させ、お茶として飲用する。
この「山茶」こそ縄文植生の植物群とともに芽吹き、成長する植物である。
中国から渡来した栽培茶とは異なる、山地自生の茶である。
神楽笛が峰に反響し、風に時折雪が混じって、野や山が冬の色になる頃、ひっそりと茶の花は咲く。
濃緑の葉と葉の間に隠れて、控えめに咲く花だが、メジロなどの小鳥は
そのありかを熟知していて、蜜を吸いにやってくる。
この花を集めて、焼酎に漬け込み、「花酒」を作って飲んでみた。すると本物の神楽の
音楽が聞こえてくるような興奮状態になり、茶の薬効、神がかりへと導く作用などを
認識したものである。古来、茶は覚醒作用のある薬草として重用された。

切り払われた森の跡地や、山焼き(昔は焼畑)の後などに、真っ先に芽生えてくる植物群の
ことを「縄文植生」「先駆植物」「パイオニア植物群」などという。それらの植物が、
やがて藪を形成し、叢林となり、林から森へと姿を整えてゆく。
その縄文植生=先駆植物にクズ、フジ、コウゾなどの蔓草類、ヌルデ、ヤマザクラ、コナラ、ケヤキなどの落葉広葉樹が含まれる。すなわち、日本列島における氷河期が終わり、現在みられるような植物生態系が始まった頃の植物群である。それらの植物が、山菜として食べて美味しく、薬効があり、染料としても良い発色を示す、人間生活にとってなじみ深く、有用な植物たちである。星のめぐりを見ながら、あるいは谷川のせせらぎを聞きながら古老から聞くような、植物と人間とのかかわりの物語。「山で生きる」ということは、そのようなことを、先人から教わり、また様々な体験によって身につけて「地力」を蓄えてゆくことでもあるのだ。

江戸後期、延岡藩に招かれ、延岡・諸塚・高千穂郷の薬草を調査した豊後(大分)の本草学者、賀来飛霞(かくひか)は、その著「高千穂採薬記」で諸塚山の「山茶」について、焼畑の跡地に
「山茶」が自然に芽生え、一箇所に数万本の茶樹が生えるのを見たと書いている。
柳田國男が椎葉に滞在し、当地に残る狩文書に出会い「後狩詞記」を著したことが、日本民俗学の発祥といわれているが、柳田の椎葉への旅は、焼畑と山茶の生産を調査することが主目的であった。 



染めは手順どおりの徹媒染。
爽やかな5月の風に染め布が翻った。
紫には30色以上の色名があるが、色の古名では「古代紫」に近い。
まさに縄文の野の色。


南国の花ジャカランダで翡翠色が染まった

宮崎神宮の北方に位置し、神武天皇ゆかりの伝承もある古社「奈古神社」の横を通り過ぎる道で、
大きな紫の光が降り注ぐような光景に出会った。農家の庭先に咲く「ジャカランダ」のであった。
奈古神社には古式の御田植え祭りや神楽が伝わっている。

ジャカランダは中南米原産の花木で、初夏に開花する。樹高は15メートルに達する。
花房が垂れ下がって咲く様は藤に似ている。葉はねむの木にそっくりである。
開花期には紫の雲がたなびくように見えることから紫雲木の和名がある。



車を急停車してその農家を訪ねると、野菜の集荷中だったその家の主婦が姉さんかぶりの手ぬぐいを取り、手を拭きながら出てきて、快く応じてくれた。20年ほど前に植えたこの木が、今年やっと花を咲かせると、それはそれは見事な咲きぶりで、近隣の人たちが集まってくれたほどであるという。花期は少し過ぎていたが、一枝所望すると、三枝ほど手折り、渡してくれた。

この三枝のジャカランダでシルクストールを染めてみる。少し調べたが、ジャカランダ染め
のデータは見当たらなかった。手順は他の草木染めと同じ木灰のアク媒染。
染め上がった布は、なんと、薄い緑色がかった梅雨明けの空のような色であった。
色の古名で「翡翠色」という。思いがけない色が得られて、愉快な一日。
次の機会には、時期や布や媒染材を変えて染めてみることにしよう。



【茜草の根を採取し、万葉の赤「茜色」を染めるワークショップ】



夕焼け空の色を表す「茜色」のことは誰でも知っているが、その茜色はどうやって染めるのか、「アカネ」という植物がどのような草でどこに生えているか、それをどのように採集して茜色を染めるのか、などということを知る人は少ない。しかしながら、日本人は万葉の時代からこの色を愛好し、多用し、歌に詠み、親しんできた。その「知」と「技」の部分を切り捨て、忘れ去ってきたのが、明治以降の百年、厳密にいえば戦後の半世紀という時代であろう。森へ行き、植物を採集し、その植物のことをよく知り、「色をいただく」という作業は、この半世紀たらずの間に失った大切なものを見つめなおし、取り戻す仕事のひとつが茜染めである。
今年・高見は高千穂と阿蘇を結ぶ峠道の脇に自生する茜の群落に出会った。茜草は藪から道路わきの側溝にまで根を伸ばしていた。第一回目はこれをいただき、染めます。
第二回目は、諸塚の渓流沿いのコテージに宿泊して、採集し、染めます。

<第一回>9月7日と8日 午前10時〜午後3時
・場所 由布院空想の森美術館 大分県由布市湯布院町川北平原1358
<第二回>9月15日16日
・場所 森の空想ミュージアム 宮崎県西都市穂北5248-13
*由布院で採集したものを持ち帰り、染めます。
<第三回> 9月28日〜29日
諸塚村のコテージ周辺にて
参加費 1日の参加・お1人5000円(シルクストール1枚分と昼食代を含みます)
*諸塚村での企画は宿泊費と当日の食材費が別途になります。
☆お問い合わせ、お申し込みは 0977-85-7542(由布院空想の森美術館)
または(担当・高見乾司090-5319-4167)へ。



夕焼け空の色を表す「茜色」のことは誰でも知っているが、その茜色はどうやって染めるのか、
「アカネ」という植物がどのような草でどこに生えているか、それをどのように採集して茜色を染めるのか、などということを知る人は少ない。しかしながら、日本人は万葉の時代からこの色を愛好し、多用し、歌に詠み、親しんできた。その「知」と「技」の部分を切り捨て、忘れ去ってきたのが、明治以降の百年、厳密にいえば戦後の半世紀という時代であろう。森へ行き、植物を採集し、その植物のことをよく知り、「色をいただく」という作業は、この半世紀たらずの間に失った大切なものを見つめなおし、取り戻す仕事のひとつかもしれない。


・これが茜草



沈み橋のある沢を渡り、林道の途中まで車を乗り入れて採集にかかる。
林の縁と林道との境の草地。ゆるやかな山の斜面。猪が餌を漁った跡のある所。そんな場所を茜草は好んで生えるのか。あるいは、そんな厳しい環境の中でこそ、生き延びてきた逞しい植物というべきか。




茜草は、一つの株から何本もの茎を伸ばし、その茎が地面を這い進んで、ある一定のところから、草むらの中を上方へ向かう。そして細い茎の先端を草藪の最上部に出し、他の草に絡みつきながら勢力を伸ばしてゆく。数本の群生を見つけたら、まず地面を這って伸びている茎を伝って、その大元というべき株の根っこを探り当てる。するとそこから四方八方に勢力を拡張している茎が見つかる。そこを掘り始める。すると間もなく、地中に張り巡らされた赤い根が見つかる。一本見つかると、あとはもう芋づる式というか、際限なくというか、
かなりまとまった数量の「赤根」が得られるのである。藪を払い、ギザギザの茎で手を少し傷め、
掘り進んでいく根気さえあれば、ある程度の量が確保できる染料であることが判明した。
やってみるまで分からぬということは世に多いが、茜も例外ではなかった。




根気の要る仕事は女性陣にまかせて、山案内の翁はしばらく沢へ。
まだ露の残っている真夏の朝の渓流で、威勢のいいヤマメを二匹釣り上げて、気分爽快。
この谷に昔からいる天然もののヤマメだ。体側に紅色の横線が走っている。



これが採集した茜草の根。文字通りの赤い根である。沢の水できれいに洗っておく。




煮沸。すぐに赤い染液となった。



布を入れる。呉汁付けをし、ミョウバンで先媒染しておいた木綿のバンダナ、Tシャツ、
広幅の木綿布などを染める。みるみる赤い色に染まり始めた。




森の中の作業風景。地元の女性たちも参加してくれたが、畑の縁に生えている厄介な雑草から、
このような鮮明な色の出ることに感嘆の声があがる。




染め上がった布が、森の中を吹く風に翻る。






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(SINCE.1999.5.20)