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楮の森へ
2015年1月3日から、小学六年生の黒木案仁君(宮崎市)と森に入り、「山仕事」をしてい.る。
以前から取り組んできた「里山を育て、染料と薬草の森をつくる」仕事を、
いよいよ今年から本格化させるのである。
ここは、古い教会を改装した「祈りの丘空想ギャラリー」から、「森の空想ミュージアム/九州民俗仮面美術館」
へと続く道沿いにある畑と森の境界地点(いずれも石井記念友愛社の敷地内)。6年前、しょうがい者の
自立支援施設「茶臼原自然芸術館(染織と農業を基本に運営)」の設立の折、その建築素材として
切り出された杉林の跡地。そこには、赤芽柏、臭木、辛夷、山桜、楠、樫、椎、コナラ、ヌルデなど、
種々の樹木が育ち始め、広葉樹と照葉樹が混生する林叢が形成され始めた所。
なんと、ここに、「楮(こうぞ)」の群生がみられたのである。
「楮」はその繊維から「糸」や「紙」が得られる蔓性植物。
私どもは、「由布院空想の森美術館(1986-2001)」での取り組みとして、楮の繊維から糸を作り、
布を織る仕事を継続してきた。楮から得られた布こそが由布院の地名の起源にちなむ「木綿=ユフ」であり、
神が宿る依り代=幣帛のことだったからである。ここ宮崎の地に移転してきてからもその作業は継続し、
現在は「茶臼原自然芸術館」へと引き継がれている。
この地に楮が自生しているということもまた、神の配慮のような気がしているのである。
楮は、根の状態で50年以上を生き延びるという強靭な生命力を持つ植物。森や杉林が切り払われたり、
「焼畑」によって林相が新しくなった時に、真っ先に芽生えてくる「縄文植生=先駆植物」と呼ばれる植物群の中
の一種でもあります。これらの植物が、染料・薬草・山菜などとして人間生活に深く関連してきた植物
であることもまた、多くの示唆に富む。楮の周囲の木を切り払い、
染料や薬草として利用される植物を残してゆく。
切り払った木は、染料や薪に使う。
楮の群生が見えてきた。
<2>
楮を刈り取り繊維を採る
昨日の記事の続き。楮の自生地で楮を刈り取る作業。
黒木案仁君の仕事ぶりもサマになってきた。
刈り取った楮を束にし、保存。
「茶臼原自然芸術館」で「楮布作り」のワークショップが毎年開催されています。
詳しくは担当・江原(080-6439-2902)へお問い合わせ下さい。
<3>
森へ続く木橋を作った
小学六年生の黒木案仁君一人が手伝ってくれたおかけで、数年前からの懸案であった森へと続く道を
整備し、小さな木の橋をかけることができた。案仁(あんじん)君は、去年から通って来ていて、すでに鉈や
鋸の使い方、潅木の切り出し方など、山仕事の基礎は身につき始めている。昨日までに「楮(コウゾ)」の
自生地を整備する仕事は一通り済ませた。一人では出来ないことが、相棒が出来、
またはチームが結成されると、仕事は大きく進展する。
私は森へと続く小道を歩き、眺めながら、いつかはこの作業を始めたいと思い続けてきた。この森には染料になる
植物が自生しており、大きな栗の木が10本以上あって、大量の栗の実を落とす。6年前から植樹された
朴の木200本、山桜200本、山桑100本(半数以上が鹿に喰われた)などが成長してきており、「里山を育て、
染料と薬草の森をつくる」という構想は、実現の一歩手前まできているのだ。
小さな木橋は、森を巡る散策路の入り口のひとつである。まず道の両脇の
下草を払い、小さな木を切り払う作業から開始。
直径30センチほどの杉の木を切り倒す。
師匠が手本を見せる。昔取ったなんとやら。
だが、こんな普段着で山仕事をしてはいけません。
見事、木が倒された。写真右はこの日使った道具。
橋が架かった。たちまち子供たちの遊び場に。
案仁君の薪割り姿。まだ一人前とは言えぬが、かなりの腕前。山仕事は、伐採、搬出、焚き火、
薪割りなどが一連の作業として連結し、完了する。
<4>
森へ続く道
先日造った森へと続く木橋を掛ける作業の続き。まだ三本の木を渡しただけなので渡るには危険。
手前の真ん中の木は「バクチノキ」。樹皮が次々に剥がれ落ちることから「身ぐるみ剥がれる」博打に負けた
男のイメージを重ねられたらしいが、この命名と木の性質とはまったく関係ない。バクチノキは紀伊半島辺りを
北限とする亜熱帯性の常緑樹らしく、明治期の神社合祀令によって切り払われようとしていた神社の森を守る
運動の中で、博物学者・南方熊楠が保護の必要性を訴えたことで知られる。
このバクチノキの枝を利用して手すりを作る。
・写真左/まず周辺の藪を切り払う。栗の倒木がある。これは搬出して薪や家の補修材として使う。
黒木案任君も手助けになるようになって来た。
・写真右/バクチノキを切る。
・倒れたバクチノキ。道を塞ぐほど大きい。
・この木は、見た目以上に硬い。葉は樫の葉に似ている。
・「バクチノキ」で検索してみた。
≪バラ科サクラ属。常緑高木。関東以西の本州、四国、九州、沖縄の暖地に分布する。別名はビランジュ(毘蘭樹)という。高さは10−15メートル、直径30−40センチくらいになる。樹皮がはがれるのを博奕(ばくち)に負けて裸になる ということからついた名である。別名ビランジュは、インドの毘蘭樹と誤ってあてたものである。樹皮は灰白色。絶えず古い樹皮が長さ数10センチ程度のうろこ状に剥がれ落ち、黄赤色の幹肌となる。葉は、長さ8−20センチの長楕円形で深緑色、葉柄の上部に2個の蜜腺があり、縁には鋭鋸歯である。9月頃、長さ3センチの短い総状花序に白色の花が多数つき、花序の軸には短毛がある。花序の下部には葉がつかず、花弁は5個で長さ2ミリの円形である。果実は、翌年初夏、成熟し、直径長さ1.5センチほどのゆがんだ長楕卵円形である。マホガニーの代用品として家具材、器具材などに使われる。葉から咳止め薬に、樹皮から黄色の染料がとれる。 ≫
やはり、鋸で切った時の手ごたえや樹幹の黄白色の肌などが、建築材に使えそうな感じは当たっていた。
しかも、黄色を染める染料として使えるとは予想外。早速、実験してみることにしよう。博打打ちなどとはとんでもない、
この木は薬用にも染料にも建材にもなる有用な植物であった。
・ジョウビタキが遊びに来てくれた。
・渡り初め。
・こんな感じ。アートな木橋です。
・焚き火と薪割り。アンジン君の薪割り姿がサマになってきた。焚き火も薪割りも、山仕事の一連の作業。
男の子にとって薪割りは最も楽しい仕事だが、伐採、搬出、小切りを経て薪割りにたどり着く。
下仕事の重要性を知っておくことも山仕事の心得のひとつ。
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