「神楽」と「仮面史」の深部へ 南九州―宮崎・鹿児島から北部九州、そして大和・吉野、奥三河、東北へと 仮面芸能の伝承地を訪ね、仮面神と語りながら、日本の仮面史の謎に挑む 土地神と渡来神の相克と交流。著者のライフワーク集大成 ☆ 《さて、「神楽」と「仮面史」には、いまだに大きな謎が存在する。「縄文の土面の消滅」と「飛鳥時代の渡来仮面の登場」までに横たわる一千年に及ぶ空白期、「女面発生の時期」「翁面の起源」「宿神」「能面以前の仮面文化」等々である。「黒神子」あるいは「山と森の精霊神」に導かれた旅は、その謎を解き明かそうとする試みでもあった。九州脊梁山地の奥深く、精霊神の原郷へ分け入った旅の過程で、その謎解きの道筋の幾つかは掴み得たように思うが、謎はますます深まったようにもみえる。 (本書・あとがきより)》 ☆ |
書評 後藤俊彦(高千穂神社宮司) 世界には仮面舞踏というものが各地に存在する。私が1979(昭和54)年に初めてヨーロッパに招かれて高千穂神楽の公演を行ったフェスティバルのテーマは「仮面とその機能」であった。しかし、ケルト文化を継承するヨーロッパ諸国の一部を除けば、わが国の神事芸能で用いられる「面(おもて)」はそれらと著しく異なる機能を有している。 日本全国に分布する里神楽に用いられる面の多くは、祖先神であり、自然神である。従って、人間自身の心を表現する能面などとは異なり、神楽の面には異形、異相、勢い、笑いと力とエロティシズムなど多様にして奥深い個性と魅力がある。 このたび刊行された「精霊神の原郷へ」は、そのような仮面神に魅せられた著者の心の遍歴の記録であり、信仰の告白でもある。 かつて由布院空想の森美術館を構え、民俗仮面の収集家でもあった著者が「黒神子(くろみこ)」という謎の黒い女面とであったことそのものが人智を超えた「神縁」であり、高見乾司という一人物をして「神楽」と「仮面史」の深奥へ、漂泊の旅人たらしめたきっかけである。 米良、椎葉、高千穂、高原など、県内各地域の神楽や伝統の祭礼をはじめ、北部九州、大和、吉野、奥三河、東北にまで足と想像力を運ばせて神々と向き合う一途(いちず)さには驚嘆する。その時々の氏の豊かな感性や詩情でつづられた記録と文章にはその場に読者たる私どもを引きずり込む臨場感がある。いつの間にか読者は著者とともに祖霊や異界の神々の世界へと誘われているのである。 古事記編纂1300年は、神話とともに、祖先の歴史とともに継承されてきた民俗の芸能を見つめ直す重要な機会でもある。記紀は記録の中に、そして神事芸能や伝統の祭礼は仮面とその形態の中に、古代人のメッセージを宿している。 本書はそれを知る重要な書物である。(2013年3月31日 宮崎日日新聞) |
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